5-3 抵当権と質権

ビジネス実務法務検定3級
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5-3 抵当権と質権

①約定担保物権

債権回収のために、債権者は担保設定者8債務者あるいは第三者)との間において担保の設定契約を締結することがある

【質権】

設定者が担保となる財産を債権者に引き渡すことにより成立する担保物権である(原則として要物契約)

【抵当権】

設定者が担保となる財産の占有を留めたまま、債権者との合意により成立する担保物件
設定者は債務者に限らず第三者でも構わない
債権者は債権回収にふさわしい財産を有する相手に担保の設定契約を締結したいからである
この第三者のことを「物上保証人」という

②質権

(1)質権とは

質権には、担保となる財産権が動産であるか、不動産であるか、債権であるかによって
動産質権、不動産質権、債権質権(権利質)の種類がある
動産質権では、室兼設定の合意と担保となる動産の引き渡しにより成立し
占有が対抗要件になっている
不動産質権も、室兼設定の合意を担保となる不動産の引き渡しにより成立し、登記が対抗要件となる
債権質権では、質権設定の合意と証書があれば証書の引き渡しにより成立し
通知または承諾などの債権特融の対抗要件を具備することになる
質権には、担保物を債権者である質権者のもとに引渡留置させることにより
債務者などに弁済を促すように心理的圧迫を加えるという特徴がある

(2)質権の性質内容

附従性、随伴性、不可分性、物上代位性がある

質権は、債権回収のために、担保となる財産権を競売にかけて債権の優先弁済を受けることのできる約定担保権である
債権質権では、債権者が債務者に代わって第三債務者から直接に債務者の有す債権の取り立てをし、債権者の債権の優先弁済を実現することができる

③抵当権

(1)抵当権とは

民法の規定する抵当権は、不動産(土地・建物)あるいは地上権・永小作権を担保として債権の優先弁済を受けることのできる約定担保物権である
質権とは異なり、動産や賃借権などの債権を担保として抵当権を設定することはできない、登記が対抗要件となる
したがって、先順位の登記のされている抵当権者が優先弁済を受けた後に
後順位の登記のされている抵当権者が配当を受けることになる、抵当権の設定契約締結の日の先後によるものではない
抵当権は、個々の不動産・地上権ごとに設定される
したがって、1つの債権を担保するために土地と建物に抵当権を設定した場合には
土地・建物の2つの抵当権が成立し、共同抵当権となる

(2)抵当権の性質

附従性、随伴性、不可分性、物上代位性がある

【附従性】

被担保債権が弁済や時効などにより消滅すれば、抵当権は消滅する
したがって、債権が消滅した場合に、抵当権設定登記のされている不動産などについて、抵当権抹消登記の手続きをする

【随伴性】

被担保債権が債権譲渡された場合には、抵当権も譲受人であるし債権者に移転する

【不可分性】

被担保債権が一部弁済された場合、抵当権は残額債権全部のために存続する
抵当権が弁済額に応じて減少するわけではない

【物上代位性】

担保物が消滅などしても、火災保険金請求権、損害賠償請求権、売買代金債権、賃料債権などの
担保物の価値の変形物に対して抵当権の効力を及ぼすことができる
金銭が設定者に支払われる前に、抵当権者による差し押さえが必要

(3)被担保債権の範囲

後順位抵当権者などがいない場合には、元本債権及び利息その他の定期金の金額について優先弁済をうけられる
後順位抵当権者などがいる場合には、元本債権は金額優先弁済を受けられるが
利息その他の定期金については担保物の競売による配当における優先弁済の範囲は満期となった最後の2年分に限られることになる
任に弁済の場合、後順位債権者などがいても、債務者は元本債権と利息その他の定期金の全額を弁済する必要がある

(4)根抵当権

根抵当権は、一定の範囲の不特定の債権を極度額の範囲で担保する抵当権である
根抵当権者と根抵当権設定者との設定契約により成立し、登記が対抗要件となることは、普通抵当権と同様である
普通抵当権は、特定の債権の担保のために設定されるので、附従性や随伴性が認めらえる
これに対して、根抵当権は、一定範囲の不特定の債権を担保するので
元本確定前は、個別の債権との結びつきはなく、附従性や随伴性が認められないという特徴がある
したがって個別の債権が全額弁済されても、根抵当権が当然に消滅するものではない
また、個別の債権が譲渡されても、当然に根抵当権が譲受人に移転するわけでもない
根抵当権は、極度額を優先弁済の範囲とすることから、元本債権・利息債権などのすべてについて極度額の範囲で担保される。
利息などについて、普通抵当権とは異なり、満期となった最後の2年分という制限はない

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