3-6 手形と小切手の役割と特徴
①手形・小切手の経済的役割
(1)概要
通常、消費者が小売商から売買によって物を購入する場合は
代金の支払いと物の引き渡しによって取引は終了する
高額な商品の場合は、クレジットカードによる支払いもある
ところが、生産者と卸売商間、卸売商と小売商間のように、数量や回数の多い企業間の取引の場合
あらかじめ当事者間で定めた支払期日に銀行などの金融機関の取引の相手方の口座への振り込みや手形
小切手による代金決済が広く行われている
手形・小切手は個人の日常の取引で利用されていなくても商取引では
代金支払いの手段として重要な役割を果たしているといえる
企業間の取引の決済方法には、その場で現金決済する現金取引と
一定期間支払いを猶予する信用取引がある
前者には小切手が利用され、後者には手形が利用されている
(2)支払い手段としての利用
たとえば、酒造の卸売商Bが酒造メーカーAから商品を仕入れている場合
AB間の取引の回数、金額、数量が増加してくると、仕入れのたびに現金による決済をするのは煩わしく
現金を持ち歩くことによる損失などの事故が生じる可能性も増大してくる
そのため、Bは銀行に支払資金を預けて置き、その都度、現金で支払うかわりにAに小切手を振り出して
実際の支払いを銀行に任せれば、現金で決済するわずらわしさと危険を回避できることになる
(3)信用の手段としての利用
卸売商Bが仕入れ時に代金を支払うことはできませんが、3か月後なら支払えるという場合
Bは3か月後に支払うことを約束した手形をAに振り出して商品を仕入れ
3か月の間にその商品を売却するなどして資金調達すれば
仕入れ先Aに渡した手形を決済し支払いを完了できることになる
②手形・小切手の種類
(1)約束手形と為替手形
①約束手形
約束手形は、振出人が受取人(名宛人)に対し
一定の期日に一定の金額を支払うことを約束した証券で
振出人が支払の約束をする。我が国では手形取引の大部分は約束手形で行われている
②為替手形
為替手形は振出人が支払人(名宛人)に対して、一定の期日に一定の金額を
受取人に支払うように委託した証券で
振出人が別の人(支払人)に支払の依頼をする点が約束手形と異なる
(2)小切手
小切手は為替手形と同様に、振出人が支払人(名宛人)に対して一定の期日に一定の金額を
受取人に支払うように委託した証券である
小切手は為替手形とは異なり、現金取引の代替手段として用いられる
③取引行為
(1)振出
振出とは、手形や小切手を発行する行為のこと、振り出す主体を振出人という。
振出人は通常銀行に当座勘定口座を設けて、銀行に手形金や小切手金の支払の窓口になることを委託し
統一用紙に必要事項を記入して支払先に引き渡す
(2)裏書
裏書とは、手形を譲渡する場合、手形の裏面に必要事項を記入したうえで、譲受人に手形を引き渡すこと
(3)支払い
約束手形では、所持人が満期かそれに続き2取引日以内に支払人に手形を提示する
小切手は受取人が小切手の裏面に住所・氏名を記入し、支払銀行に定時する
④法律的特徴
(1)有価証券
財産権を表す証券で、権利移転に証券の交付を
権利の行使に減速として証券の所持を必要とする証券で、手形・小切手は代表的なもの
(2)設権証券性
手形が発行される基礎には売買などの原因があるのが普通だが
手形に表示される権利は、このような既存の原因関係上の権利ではなく
一定の金額を手形上に記載して振り出すことで、証券に表示された内容の債権が発生する
つまり手形上の権利の設定は証券の作成自体によって生じることになる
(3)無因証券性
債権または債務を発生させた売買などの原因が有効であるが否かに関係なく
常に独立の効力を認められる証券
原因である法律関係の有効な存在を要件とせず、原因関係を手形上の法律関係(手形関係)は
法律的には別個独立のものとされ、そのため、権利の行使には原因関係の照明は必要なく
また、その権利は原因関係が無効、取消または解除されても
手形関係は影響を受けないことになる
(4)文言証券性
証券の表す権利の内容が、証券の文言のみで定まる証券
手形や小切手は、権利の発生・移転・行使の前段階で主権が必要とされることから
その権利・義務の内容は証券の記載のみによって決定される
(5)要式証券性
記載事項が法律によってきめられている証券
様式性の程度は一様ではないが、手形・小切手は法定事項の1つでも欠くと証券が無効となる