8-4 遺言
①遺言の方式
遺言は民法の定める方式に従って作成しなければならない
遺言は遺言者が死亡することによって効力が発生するので
その内容をあらかじめ明確なものをしておく必要がある
・普通方式
自筆証明遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言
・特別法式
死亡の危急に迫った者の遺言、伝染病隔離者の遺言、在船者の遺言、船舶遭難者の遺言
(1)自筆証書遺言
遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押して作成する
自書によるから、PCで作成したり、ビデオの映像で作成しても、自筆証書遺言とはならない
日付について、「吉日」など、作成日を明確にできない記載をすると、その遺言は無効となる
(2)公正証書遺言
証人2人以上の立ち合いのもとで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記し
遺言者及び承認にこれを読み聞かせ、または閲覧させ、その正確なことを確認した後
遺言者及び証人がこれに署名・押印し
その証書が公正証書方式による旨を付記して公証人が署名し印を押す方式
(3)秘密証書遺言
遺言者が証書に署名し印を押したうえで、その証書を封じ
証書に用いた印象を持って封印した封書を公証人及び証人2人以上の前に提出し
併せて自分の遺言書であることを申述し、公証人が日付と遺言者の申述を封紙に記載した後
遺言者及び証人がともに署名し印を押すことにより作成される遺言
②遺言書の検認
遺言書の保管者や遺言書を発券した相続人は、相続の開始を知ったあと
遅滞なく、これを家庭裁判処に提出してその検認を請求しなければならない
検認は、遺言書の存在を明確にする手続きであり
検認を経たからといって遺言書が有効とされるわけではない
公正証書遺言は、遺言書について検認手続きをする必要はない
自筆証書遺言、秘密証書遺言及び特別法式の遺言について、検認が必要
③遺言能力
15歳に達したものは、遺言をすることができる
未成年者であっても、15歳になれば遺言の意味が理解できる判断能力が認められるからである
④成年被後見人の遺言
成年被後見人も事理を弁識する能力を一時回復したときには、有効な遺言をすることができる
ただし、事理を弁識する能力を一時回復していた状態であることの確認のため、医師2人以上の立会が必要とされている
⑤方式を欠く遺言の効力
遺言は方式を守らずに作成されると、遺言としての効力を生じないのが原則
しかし、秘密証書による遺言が、その方式に欠けるために無効なときでも
自筆証書遺言の方式を具備している場合には、自筆証書による遺言としての効力を有することにしている
⑥共同遺言の禁止
遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない
内容や効力発生時期についての法律関係を複雑にしないため、共同遺言が禁止されている
⑦遺言の撤回及び取消
(1)遺言の撤回
遺言者はいつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を撤回することができる
(2)遺言の抵触
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については
後の遺言で前の遺言を撤回したものをみなす
また遺言が遺言後の生前処分を抵触する場合も、その抵触する部分については
生前処分で前の遺言を撤回したものをみなす
たとえば、遺言で与えることにしていた宝石を遺言者が他人に譲渡してしまった場合
その遺言はその部分について撤回したものをみなす
(3)遺言書または遺贈の目的物の破棄
遺言者が故意に遺言書を破棄したとき、その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなす
また、遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したとき
その破棄した部分については遺言を撤回したものとみなす
⑧遺言の効力の発生時期
遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生じる
遺言に停止条件を付した場合において、その条件が遺言者の死亡後に成就したとき
遺言はその条件が成就したときからその効力を生じる