3-2 売買契約の成立後の法律関係

ビジネス実務法務検定3級
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3-2 売買契約の成立後の法律関係

①契約成立後の債務の履行

(1)権利義務の発生と弁済

①契約の効力

売買契約が成立すると、契約当事者に権利義務が発生する
たとえば、土地の売買契約の場合
売主は代金を請求する権利を有し、かつ目的物(土地)を引き渡す義務を負う
買主は代金を支払う義務を負い、かつ目的物(土地)の引き渡しを請求する権利を有することになる

②弁済の内容と場所は、特定物か不特定物かで異なる!

弁済の場所は、契約で定めることができるが
定められていない場合には、契約の目的物が特定物か不特定物かで異なってくる
まず特定物とは、当事者が物の個性に着目したときのその物
不特定物とは、特定物以外のもので種類別に決められるものです
具体的には、Aさんが所有しているデジカメ。というのは、世界に一つだけのもので
他に代わりがないものなので”特定物”
それに対し、型番が○○のデジカメ。は、種類は特定されているが代わりが用意できるものなので”不特定物”となる
特定物を目的とする契約は、債権発生時にその物が存在していた場所
不特定物を目的とする契約は、原則として
債権者の現在(弁済時)の住所が弁済の場所となる

(2)弁済の提供

①弁済の提供とは

弁済の提供とは、債務者側で債務の履行のためにできるすべてのことを行い
あとは債務者が協力すれば履行が完了するという債務者側の行為である
たとえば、債務者が弁済期日に目的物を債権者の営業所に持参する行為などである
債務者は弁済の提供をすれば、仮に債権者が受領しなくても
そのときから、債務不履行の責任を逃れることになる

②瑕疵ある物の提供

特定物の場合、他に替わりの物はないので、瑕疵ある物の提供でも弁済の提供と認められ
後は瑕疵担保責任の問題となる
不特定物の場合、他に替わりの物がある以上、債務の本旨に従った履行とは認められず
債務者は依然として瑕疵のないものを提供する義務があり
履行期に遅れれば債務不履行責任を負うことになる

(3)目的物の所有権の移転時期

売買契約では、目的物の所有権移転時期は、原則として売買契約の当事者間で意思表示が一致したとき
ただし、代金の支払いが後払いや分割払いとされている場合
特約で、代金完済時とすることもできる

②債務不履行

(1)債務不履行とは

債務不履行とは、債務者が債務の本旨に従った履行をせず、かつそのことにつき
債務者に故意または過失(帰責事由)がある場合、債務不履行があるという
債務不履行があると、債権者は要件を満たせば
履行の強制、損害賠償の請求、契約の解除ができる
損害賠償の請求は原則として金銭による

(2)種類

①履行遅滞

故意または過失によって履行期に履行が可能なのに履行をしないこと
例)物品の売買で、売主Aが過失によって履行期に物品を引き渡さない場合 等

②履行不能

債務者が故意または過失によって契約成立後に履行できなくなることで
たとえば、中古住宅の売買契約が成立した後
売主の過失によって当該住宅が消失した場合、履行不能となる

③不完全履行

債務は一応履行されたが、その履行が不完全で
債務の本旨に従った履行とはいえない場合で
改めて完全な履行を請求できる場合と完全な履行を請求しても意味がない場合に分かれる
※金銭の貸し借りや、種類債権の場合、履行不能とはならない
(いかなる理由があっても代理の物が用意できるから)
特定物債権の場合のみ、履行不能の可能性がある

③受領遅滞

受領遅滞とは、債権者が債務の履行を受けることを拒絶または受けることができないことをいう
債権者が受領しないことによって増加した費用は、債権者の負担になり
債務者は目的物を供託して債務を逃れることもできる

④担保責任

特定物を目的とする売買契約で、成立時に目的物に瑕疵があるとき
別のものに替えることはできず、売主に責任を負わせたものである
売主に帰責事由は必要ではなく、民法で認められたものである
買主は要件を満たせば、損害賠償、契約の解除、代金減額の請求ができる
たとえば、AがBに売り渡した中古住宅に雨漏りがあった場合
Bは損害賠償請求権、解除権、代金減額請求権などを請求できる
担保責任は、契約成立前から存在していた欠陥(瑕疵)の問題で
債務不履行責任が契約後に生じた欠陥などによって契約内容が実現できない場合の問題である点と異なる
瑕疵担保責任が代表的なものとなる

⑤危険負担

(1)危険負担とは

売買などの双務契約において、一方の債務が債務者の故意または過失(帰責事由)によらず成立後に不能になったとき
その履行不能の危険を債務者と債務者のいずれが負担するかという問題
債務者の帰責事由を問題にしていない点で、債務不履行とは異なる

(2)種類

①債権者主義

履行不能となった債権の債権者が反対債務を負担する
売買契約では、買主の負担とされ、買主は目的物を受け取ることができず
代金支払義務を負うことになる

②債務者主義

履行不能となった債権の債務者が反対債権も失う場合である

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